ガソリンスタンド過疎に危機感


町のガソリンスタンド消滅の危機 過去最悪の勢いで閉鎖(朝日新聞)

原油高や暫定税率の一時期限切れの影響で、ガソリンスタンド(GS)が今年度、過去最悪の勢いで閉店に追い込まれている。9月末までの半年で1千店を超え、影響は特に地方で深刻だ。全国にはGSが3店以下しかない自治体が約150カ所あるが、GSが町から消える事態が現実味を帯び始め、「過疎化を一気に加速しかねない」と懸念する声が出ている。

 朝日新聞が各地の経済産業局などに聞いたところ、3月末に全国で4万4057店あったGSは、その後の半年で1109店(速報値)減った。減少率は年率換算すると5%で過去最悪。セルフ式の解禁で急激に整理が進んだ98年度の3.1%を大きく上回る。

 宮城県南部の中山間地、七ケ宿町。人口2千人弱、ほぼ半数が65歳以上だ。町役場近くでスタンドを営む小笠原憲雄さん(68)は今、廃業の瀬戸際に立たされている。

 業績不振で3月、石油元売り大手から「契約解除」の通告を受け、ブランドマークの看板などはすべて取り払われた。飛び込み客はほとんど来ない。3月末の暫定税率の期限切れで、3月に仕入れた高い在庫を1リットルあたり22円下げて売ったため50万円の損が出た。原油高騰がピークを迎えた7月には消費者の買い控えで収入が半減。社員である妻と長男への給与支払いが6、7月と滞り、労働基準監督署から指導を受けた。

 秋から原油価格は下がり始めたが、高く仕入れた油を安く売らざるを得ない。赤字は膨らむ一方で、自身の年金と預金の取り崩しで食いつなぐ。廃業も検討するが、1千万円かかる地下タンクの除去費用が工面できず、やめるにやめられない状態が続く。町にはGSがもう1店あるが、ここも赤字で店の経営は厳しい。

 町の交通手段はもっぱら車だ。町にGSがなくなると、町役場から十数キロ離れた隣接する白石市のGSに行かなければならなくなる。梅津輝雄町長は「過疎地にとってスタンドがなくなることは死活問題。第三セクターなどで運営を請け負うことも考えなければ」と気をもむ。

 冬は屋内でも零下になる同町。小笠原さんに灯油を配達してもらっている独り暮らしの女性(78)は「灯油は生きるのに欠かせない」と心配する。車は運転できず、GSがなくなると白石市までバスで買いに行くしかない。18リットルのタンクは3日でなくなる。「誰かに頼もうにも周りは年寄りばかり。配達さなくならねえようにしてけらんせ」

 「冬に備えて灯油前売り券を40万円分も買った」「ガソリンのプリペイドカードを払い戻せない。年金生活なのに」――。青森県では「柿本ショック」と呼ばれる騒動が起きた。県内大手の柿本石油(青森市)が10月6日、全25店を閉めた。県消費生活センターには、閉鎖後1カ月で1700件を超える相談が寄せられた。

 ガソリン税暫定税率期限切れを先取りして値下げし、全国的に注目を集めた同社。ガソリンを現金前払いで安く仕入れ、薄利多売でもうけるつもりだったが、暫定税率復活や原油高で仕入れ額が膨れあがって資金繰りがつかなくなったという。

 全国石油商業組合連合会によると、GSが3店以下しかない自治体は3月時点で153カ所(離島など除く)。北海道が41カ所と最も多く、ついで関東39、東北23などとなっている。4月以降さらに深刻化している可能性が高いという。

 石油流通に詳しい小嶌正稔・東洋大教授は「地域にスタンドがなくなれば、高齢世帯への灯油の配達が滞る。農作業車や除雪機などは、容易に遠方のスタンドまで給油に行けない」と指摘。「過疎地にとってスタンドはライフラインの一部。消滅は、過疎化を一気に加速させる」と警鐘を鳴らす。


↑の記事を受けてか、中日新聞の長野版に↓の記事が掲載されていました。


県内GS、11年で2割減 過疎地の半数が赤字(中日新聞・長野版)

原油価格の下落を受けて、県内のガソリン販売価格は2007年当初並みの水準まで下がってきた。一方で、仕入れ価格の乱高下に振り回されたガソリンスタンド(GS)は厳しい競争が続くが、山間地のGS経営は存続の危機にさらされている。

 県内のGS“過疎地”は23町村−。GSの業界団体、全国石油商業組合連合会(全石連)は今月18日、こんな調査結果を発表した。一自治体内に3店以下の町村を過疎地と位置付け、山間地を中心とした全国153町村のうち県内に23が集中した。GSの減少が進めば山間地に住む人への石油製品の供給が困難になる、と指摘。行政の支援や住民との連携などを提言している。

 県内で過疎地とされたのは1店の清内路、平谷、王滝、北相木、高山の5村と、2店の青木、根羽、売木、天龍、泰阜、大鹿、朝日、木島平、小川、中条の10村。3店の南相木、中川、下条、喬木、生坂、山形、野沢温泉、飯綱の8町村。下伊那郡内が9村だった。

 GSの店数は、新規参入を制限する特石法が廃止された1996年以降、減り続けている。資源エネルギー庁の調べでは、同年度末に1511店あった県内のGSは、07年度末で1252店と約2割減。全国では6万店から4万4000店と、減り方は県内よりハイペースだ。

 全石連の調査結果について、県石油商業組合の平林一修理事(66)は「市町村合併が進まず、小規模な町村が多いからだ」と冷静に分析する。だが、現状については「行きすぎた規制緩和で過当競争状態だ」と声を荒らげ「法律レベルで流通の仕組みが変わらない限り、弱肉強食の状態は続く」とみる。

 地元の小規模資本のGSは、元売りの系列GSに比べて、値引き競争で不利なのは明らか。県石油商業組合では、子どもが不審者に遭遇したり道に迷ったりした時の避難所としての利用を呼び掛け、地域貢献をアピールして生き残りを図る。

 全石連は経営状況のアンケートも併せて実施。過疎地のGSの半数が赤字の上、1割は「すぐに廃業したい」と考えている。主な客である地域の人口減だけでなく、経営者自身の高齢化に不安を抱えているという。

 平林理事は「県内資本のGSの廃業が進めば、消費者が払ったガソリン代が県内で回らず都会へ流れる。地方経済の空洞化に拍車をかけることになる」と警鐘を鳴らしている。


この記事をなぜ取り上げたのかというと、よしくまの母方のお姉さんがガソリンスタンド過疎地の村でガソリンスタンドを経営していて、母の話だと、おばさんのガソリンスタンドのある村では、もう一つのスタンドの経営者が最近亡くなったそうで、その村ではおばさんのスタンドが唯一のガソリンスタンドで、忙しいそうですが、昨今の原油高の影響で経営がきびしいという話も少し前に聞きました。


後継者の問題もはらんでいるようなので、何らかの手を打つべき時がきているのではないかと思います。