長野市で聖火リレーが行なわれる

今日は騒然とした空気の中で、粛々と行なわれました。

まずは前日の新聞記事から

「10年前は誇りだった」 五輪聖火長野入り(中日新聞・長野版)

北京五輪の聖火が25日、長野市に到着した。市街地は警戒にあたる警察官の姿が増え、中国を批判する団体などの抗議活動も高まりを見せた。市の実行委員会は式典会場の準備作業に追われ、市民は「無事に終えてほしい」と願った。

 聖火を乗せたバスの隊列は上信越自動車道から長野県に入った。群馬県境で警備を引き継いだ長野県警のパトカーに先導され、午前11時40分ごろJR長野駅前のホテルに到着した。

 ホテルは数十人の警察官に囲まれ、敷地内は一般の立ち入りが禁止される厳戒態勢。到着のセレモニーなどはなく、青いジャージー姿の中国人スタッフが、聖火がともされたランタンの入った箱を両手で抱えて運び込んだ。

 長野市内はパトカーや機動隊の車両が行き交い、制服姿の警察官が路上で警戒にあたる物々しい雰囲気。


 チベット雪山獅子旗を掲げて歩く男性の姿が見られたほか、聖火の到着直後には、中国で非合法化されている気功集団「法輪功」がブラスバンドで行進。街宣車で主張を訴える団体もあった。

 聖火リレーの出発式が行われる県勤労者福祉センター跡地では、市実行委がステージの設営など準備作業を急ピッチで進めた。

◆まゆひそめる旅行者
 聖火が入ったホテルを見上げていた長野市の主婦(64)は「10年前は聖火を持たせてもらって盛り上がった。だから今回も見に行こうと思っていたんですが、なんだか怖いのでやめます」とぽつり。駅広場にいた山ノ内町の会社員宮沢景さん(23)は「物々しくて驚いた。10年前の聖火リレーは本当に誇りに思った。だからこそ今回、こんなふうになるとは思ってもなかった」と残念そうだった。

 旅行者もこの騒動にまゆをひそめる。東京から家族で旅行に来た小野暢思さん(15)は「警察官が囲むから、聖火の先っぽしか見られないんですよね。平和からかけ離れていますよ」とつぶやいた。

 長野駅前は、著名人ランナーの登場や複数の団体による抗議活動が予想され、最も厳しい警備態勢が敷かれる区間の一つになる。

◆厳戒警備に知事が理解
 聖火リレーについて村井仁知事は25日の会見で「長野の地で静穏に行われることをひたすら期待している」と述べた。

 知事あてのメールで100件を超える意見が寄せられ、「聖火リレーが現実の政治の成り行きと無関係でありえないと、しみじみ感じさせられた出来事」と実感を込めた。

 厳重な警備について、自身が2002年のサッカーワールドカップ(W杯)日韓共催期間中に国家公安委員長を務めた経験から「事が起きてはいけない。あらゆる手を打つのが何より」と理解を示した。

 当日は「やじ馬の一人として、どこかに出掛けるかもしれない」とも話した。

◆五輪には反対しない…チベット支援団体ら
 聖火リレーに合わせて善光寺チベット暴動による犠牲者の追悼法要と、沿道でチベット問題のアピール活動を予定している「チベットに自由を求める学生の会」(SFT)日本支部と市民団体「チベット問題を考える長野の会」(野池元基代表)、協力団体の「平和を願う僧侶の会」(若麻績敬史(わかおみけいし)代表)が25日、県庁で会見した。

 亡命チベット人2世でSFT日本支部のツェリン・ドルジェ代表(34)=名古屋市南区=は「チベットの人権状況は悪くなるばかり」と声明文を朗読。中国政府に対し、調査団を受け入れチベットでの事実関係の調査、チベット人への弾圧中止などを求め、「私たちは五輪には反対していない」と強調した。

 また、26日の法要は当初午前7時からを予定していたが、聖火リレーの出発式と同時刻の午前8時15分に変更。若麻績代表は「犠牲者が一人でも減るよう祈りの心をいただければ、一番の喜び」と述べた。

当日だけでなく、前日からも物々しい警備だったようで、歓迎ムードにも水を差す感じだったのでしょうか。


さて当日です。

騒然長野聖火リレー 投げ込み・乱入など5人逮捕(アサヒ・コム)

北京五輪聖火リレーが26日、長野市内であった。ギリシャで採火された聖火を80人のランナーが4時間余でつないだ。チベット問題で世界中の注目を集めたため、中国人学生やチベットの支援者らが詰めかけて市内は騒然となった。リレーへの妨害行為も相次ぎ、5人が逮捕された。

 世界各地での混乱を受け、警察当局は当初予定の6倍の約3千人で警備にあたる厳戒態勢を取った。ランナーには中国側のスタッフ2人が伴走。透明のプラスチック製の盾を持った警察官数人が囲み、外側左右に約50人ずつ計約100人の警察官が人垣をつくる形で聖火を守った。

 第1走者は野球日本代表監督の星野仙一さんで、スケート選手の岡崎朋美さんらも登場。午後0時半に、マラソン選手の野口みずきさんがゴールし、聖火台に火をつけた。

 妨害行為もあった。タレント萩本欽一さんに対してチラシなどが投げ込まれ、神奈川県の男(30)が道路に飛び出した。卓球選手福原愛さんの時は、チベットの旗を持った台湾人の男(42)が列に飛び込んできた。ほかにも東京都の男(25)が飛び出して卵のパックを投げ込んだ。愛知県の男(63)がトマトを投げ込み、東京都の男(38)が走者の列に飛び込もうとした。

 県警はトマトを投げた男を暴行容疑で、4人を威力業務妨害容疑で、それぞれ現行犯逮捕。いずれも容疑を認めており、神奈川県の男は「チベット問題の解決を訴えたかった」、台湾人の男は「中国人がたくさんいたので興奮した」などと話している。また、県警は観客同士の暴行、傷害事件3件を調べている。

 沿道や会場にはチベット問題で中国に抗議する人や、逆に応援する人などで計8万5600人(主催者発表)に。断続的に小競り合いが起き、中国人男性計4人が病院に運ばれた。いずれも軽傷。

 聖火はこの日夜、羽田空港から次の開催地・ソウルに向けて出発。その後、平壌ベトナムホーチミン市などを回る予定だ。


聖火リレー 声援は政治にかき消された 長野(アサヒ・コム)

北京五輪の長野聖火リレーが26日、厳戒態勢の中で終わった。卵を投げつける人や、隊列に走り込む人が出て会場には緊張感が漂い、楽しみにした市民にはランナーの姿はほとんど見えなかった。怖がって沿道に出るのを控えた人も多く、「聖火って一体なんなの」との疑問も漏れた。

     ◇

 聖火リレーの観衆は約8万5600人にのぼった。ほとんどは中国やチベットの巨大な国旗を振ったり、プラカードを掲げたりする人たち。地元・長野市民の姿が政治の渦にかき消された、「市民不在」の18・7キロだった。

 「近所の人が全然いないよ」。陸上の末続慎吾選手が走ったスタート会場の近く。赤いTシャツの若者で埋め尽くされた沿道で、初老の男性があたりを見回した。

 畳1〜2枚分はある旗が、無数にたなびく。沿道からは、日本語の声援は何も聞こえない。「これじゃ、聖火が全然見えないじゃないか」。言い捨てて、男性は去った。

 公募枠でランナーになった信州大4年生丸山佳織さん(21)も「中国の人がすごく多かった」と、中継地点を取り囲む赤い旗に戸惑った。

 少林寺拳法の道場を市内で開く荒井高志さん(64)は、中国大使館の要請を受けて、沿道で雑踏警備のボランティアに参加した。

 98年の長野五輪時には千人を超える門下生がボランティアで警備にあたった。が、この日はわずか25人。「リレーが政治的な対立の場になっているので参加したくないという意見も多くて……」。歯切れが悪かった。

 長野県佐久市の春原直美さんは、この日、日本語教室のボランティア活動に行った。長野県国際交流推進協会の事務局長。

 市民ランナーがいて、それを応援する人がいて、沿道から拍手や掛け声がわき上がる――そんな理想の姿とは、ほど遠い聖火リレーがテレビに映った。「国際交流とも別次元のものになってしまい、残念だ。これだけ騒いで何が残ったのか」と疑問を投げた。

 スタート地点から8キロほどのコース脇の神社では、地元の住民30人ほどが早朝から境内の掃除に忙しかった。数日後の春祭りに備えた草むしりだ。「聖火が通るって言うけど、色々混乱してて大変なんでしょ」と、軍手姿の村田千恵子さん(82)。

 聖火が目の前を通り過ぎるとき、村田さんは手を止めた。パトカーに続いて現れた警察官の集団の中に聖火がチラッとだけ見えた。行列が去ると、また腰を折り、草を取り始めた。「長野五輪のときはもっと聖火が身近だった。今回は何か雰囲気が違う」

 到着式会場の若里公園に来た長野市の短大生北原成美さん(20)は、国歌を歌う中国人留学生が次々と押し寄せるのが怖くなって、会場を遠巻きにした。98年の時は小学生。わくわくしながら聖火を見に行った覚えがある。

 「チベット問題を訴える人も、それに対抗する中国の人も、五輪や聖火リレーを自分の主張に利用している感じがする」

 79番目に走ったマラソン有森裕子さんは、コースの左右で中国側とチベット側に分かれて怒鳴り声をぶつけ合う人たちが、自分を見ていないのに気が付いた。「普通ではない中で行われた聖火リレーに参加した一人として、走ってみて複雑でした。世界の状況を考えずにはいられません」


記事にもあるように、10年前とは全く趣が異なっていました。長野市から離れているところに住んでいる私でも、聖火リレーの時はわくわくした感じがあったのですが、今回は中国とチベットの政争の場になってしまったのが残念でなりません。

歓迎ムードを作るにもつくりきれないというもどかしさがあったように思います。

地元メディアでの報道は↓

聖火リレーがゴール 途中、妨害行為も 5人逮捕(信濃毎日新聞)

北京五輪聖火リレーは26日、長野市内の18・7キロのコースで行われ、80人のランナーが聖火をつないだ。途中、ランナーに向けてものが投げられたり、コースに人が飛び出したりする妨害行為が相次ぎ、5人が威力業務妨害の疑いなどで逮捕された。沿道では中国国旗を振る中国人らとチベット問題に抗議する人々らの間で衝突や小競り合いが多発し、4人がけが。聖火は混乱の中、予定より約15分遅れの午後零時半すぎに若里公園に到着し、リレーは終了した。

 聖火は午前8時26分、北京五輪野球日本代表の星野仙一監督がトーチを掲げて県勤労者福祉センター跡地を出発。ランナーは、白いジャージー姿や制服の警察官ら約100人に囲まれながら長野駅前、長野運動公園、休憩地点のエムウェーブビッグハット周辺などをリレーし、北京五輪女子マラソン日本代表の野口みずき選手が若里公園にゴールした。

 若里公園で行った到着式では、関係者が見守る中、簡易聖火台に点火された。

 長野駅前では走者のタレント萩本欽一さんが通過する際、沿道からビラの束などが投げ込まれ、県警はビラを投げた男に任意で事情を聴いた。コースに飛び出した別の日本人の男を現行犯逮捕。卓球の福原愛選手が走った同市柳町ではチベットの旗を持って飛び出した外国人の男が現行犯逮捕され、南長池では袋に入った卵を投げてコースに飛び出した日本人の男が逮捕された。栗田北中でも男が飛び出し、取り押さえられた。

 長野駅前には早朝からリレーを応援する中国人留学生らとチベットの自由化を訴えるグループなどが集結。一部でつかみ合いになり、警察官が割って入った。午前7時前には中越の交差点で中国人グループと日本人のグループがもみ合いになり、中国人とみられる1人が顔にけが。吉田5丁目でももみ合いで1人がけがをした。

 午前10時半すぎには長野駅東口で中国人グループとチベットを支援するグループの数十人がつかみ合いになり、乱闘騒ぎに。中国人とみられる2人がけがをした。

 リレー休憩地点のエムウェーブでは、運ばれた聖火を一時ランタンに移して市民らに見せる計画だったが、中国側がトーチの火をいったん消してそのままバスに運び、披露されなかった。

唯一と言っていいくらいの微笑ましい話題と言えば、夕方のローカルニュースで伝えていた、欽ちゃん(萩本欽一さん)がリレーを終えた後、沿道に出ていた人たちにハイタッチをしていた場面だったでしょうか。

大きな事件はなかったものの、何のためのリレーなのかということを考えさせられた今回のリレーでした。