ポニョの舞台が守られる方向へ


鞆の浦景観訴訟:県に埋め立ての差し止め命じる 広島地裁(毎日新聞)

瀬戸内海国立公園景勝地、鞆(とも)の浦(広島県福山市)の埋め立て・架橋計画に反対する住民が「歴史・文化的景観が失われる」として、広島県を相手取り埋め立て免許の差し止めを求めた訴訟の判決が1日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長(現広島地・家裁呉支部長)は、鞆の浦の景観を「国民の財産」と指摘、「埋め立てがされれば景観への影響は重大で、埋め立ては裁量権の逸脱」として原告の訴えを認め、県に差し止めを命じた。改正行政訴訟法に基づき、景観保全を理由に着工前の工事の差し止めを初めて命じた画期的判決。今後の開発行政に影響を与えるのは必至だ。

 公有水面埋立法(公水法)では、埋め立て工事の際には知事免許が必要。さらに今回の場合、知事は免許を出すにあたって国土交通相の認可を得る必要があり、公共事業見直しを掲げる民主党政権の対応も焦点となる。

 訴えたのは、埋め立て対象の海に排水権を持つ人など163人(提訴後に4人死亡)。良好な景観を享受する「景観利益」は法的保護の対象か▽計画は公水法や瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)の要件を満たしているか−−などが争点だった。

 能勢裁判長はまず、景観利益について、最高裁判決などをもとに、「法律上保護に値するもの」と認定。鞆の浦の景観を「歴史的、文化的価値を有するもので、国民の財産」などと評価し、「工事が完成した後に復元することはまず不可能」と指摘した。

 そのうえで、公水法や関連法規は、個別の景観利益も保護していると認定。「計画は景観を侵害するもので、政策判断は慎重になされるべきだが、よりどころとなる調査・検討が不十分、不合理な場合は裁量権の逸脱にあたる」と判示した。

 鞆の浦万葉集にも詠まれ、宮崎駿監督が映画「崖の上のポニョ」の構想を練ったことでも知られる。

今回の判決は、単に環境保護、景観保護といった問題でなく、最近で言うところの八ッ場ダムに代表される、公共事業の必要性を多面的に捉えていくことの重要性を国や地方自治体が問われたものになったのではないでしょうか。


そんな中で、映画「崖の上のポニョ」の監督の宮崎駿さんが以下のコメントを発表しました。


ポニョ宮崎駿監督「鞆の浦判決、当得ている」(Yahoo!ニュース・読売新聞)

1日、広島県鞆の浦の埋め立て・架橋事業に反対する住民らが勝訴した判決を受けて東京都小金井市スタジオジブリで急きょ、記者会見した宮崎駿監督は「今後の日本をどうするかという時に、いい一歩を踏み出せる。鞆の浦のような文化財に対して、(県と市の埋め立て・架橋事業は)準備や計画があまりにもずさんだと指摘した判決は、当を得ている」とにこやかに話した。

 宮崎監督は、4年前に鞆の浦の近くに民家を借りて2か月間、1人で滞在したことがあったといい、「生涯何度も味わえない体験だった。その時の体験が崖の上のポニョのヒントになった」と語った。

宮崎監督が言うように、本当に守るものは何かということを改めて考えさせられるきっかけになったと思います。

この判決を、国や地方自治体は重く受け止めるべきですね。