中林忠良さん展覧会&ギャラリートーク

昨日の話になりますが、高森町にある今村版画造形で昨日から22日までの日程で始まった「中林忠良展」の観覧と中林さんのギャラリートークの聴講に行ってきました。

昨日は天候が良く、高台にあるので、南アルプスの山容もはっきりと見渡せるという、絶好の日和の中の半日をこの空間で過ごしました。

今回の展覧会は、会場の主で地元で活躍している銅版画家の今村由男さんが中林さんの弟子であるという関係から実現したものです。

私が今村さんの作品のファンであり、市内の別の文化施設に今回の展覧会を案内したチラシがあり、それを見て、今日訪れました。


中林さんの作品は、モノトーンながらも、白と黒の絶妙なバランスのある作品で、自然と対峙して制作しているのが特徴です。

あとはリアリティを追求した作品が特徴でもあります。

私も作品を見て、感嘆しきりでした。


そして、ギャラリートークでは、中林さんの生い立ちはもとより、版画の役割、自然との調和を重視している理由を話されました。


版画の役割については、約600年前のデューラーの作品である「サイ」を例に出し、その当時、広範に情報を伝達する手段は版画であったこと、そして、それが後世に脈々と伝えられ、模写されていったということを話されました。

そして、現在は版画は美術作品としての価値を見出しているが、お菓子を作るときに使う金属製の型や焼印など、日常生活にもは受け継がれているということも話されました。


版画家をやってきた中で中林さんは、銅版画特有の腐蝕で発生する化学物質の影響で体を壊し、ドクターストップをかけられました。

その中で、いかに安全に版画作品の制作ができるかということを突き詰め、第二の版画家人生をスタートさせました。

この頃から中林さんは自然との調和を意識するようになったそうです。

作品にもその理念は生かされ、地面にある芝草を採集して、自分の目線に合わせるように紙に芝草を貼り合わせ、それをコピー機で転写させて、それに修正を加えて作品にしていくということをしたそうです。

そして、25年前にアトリエを蓼科高原(長野県)に作ったことを、本来ある自然を、自分がアトリエを建てたがために割いてしまったことに後ろめたさを感じたそうです。

以下、自分が印象に残った話として、「人は自然と大なり小なり関わっていかなければならない。それは、水を飲んだり、肉や草を食べたりすることがそれに当たる。しかし、どれだけの度合いで自然に関わりを持っていくかが重要になってくる。」が挙げられます。

現在問題になっている、福島第一原発から漏れている放射能の問題に代表されるように、元来ある自然を侵すことがどれだけ罪であるかということが、今我々に突き付けられていると思います。

ただ制作するだけではなく、モチーフになっている自然にいかにして寄り添っていくかということが重要であるかが分かりました。


こういった話が聴けて、素晴らしい作品を見ることができて、本当に有意義な時間を過ごすことができました。